研究者の声

生命情報工学研究センターの各研究チーム長が実際の研究活動や、
センターで働く理由など生の声をご紹介します。

広川 貴次 生体分子解析チーム (併任)
広川 貴次
沖縄県出身 昭和46年生まれ
東京農工大学大学院 工学研究科修了
  その場その場で評価される仕事をすれば、
         場所は問題ではないと思いました。
─ CBRCに参加された経緯をお聞かせ下さい。
  いつごろから? きっかけは?

 大学院を卒業後、民間企業に就職。 3年間の勤務の間は、分子のモデリングを行うソフトウェアの技術サポートとベンチマークが、主な仕事でした。 その企業での3年目が終わる頃、ちょうどCBRCが設立されるという話を聞きました。 興味を持った私に、前センター長だった秋山さんが誘ってくれて……というのが、参加のきっかけです。

 秋山さんの「アカデミックな分野の人だけでなく、民間企業の現場で仕事をした経験のある人材がほしい」という一言は、大きかったですね。 ちょうど、私が取り組んでいる創薬の分野でも、そういった人材は必要だと考えていましたから。 お誘いを受けて最初は考えましたが、最終的には「その場その場で評価される仕事をしていれば、場所は問題でない」と思い、参加を決意しました。 どのような場所でも、きちんとした成果を挙げていればよく、いったんアカデミックの研究機関に入ったからといって民間企業に戻れないわけではありません。 その逆も同じです。 CBRCには、そんな考えを持って参加しています。

  自分の発想に自由に取り組めるメリットを、
                   強く感じています。
─ CBRCでは、どのような研究テーマに
  取り組んでいらっしゃるのですか。

 現在は、コンピュータを使った仮想空間で、薬となる分子の設計を行うことをテーマにしています。 いわゆる、創薬の分野ですね。 企業からいらっしゃる共同研究者の方も含めて19名のチーム員で、日々、研究を進めています。

 民間企業に勤務していたときと、CBRCでの仕事の違いは、制限の少なさです。 民間企業だと、どうしても利潤や利益などが重視されるので、研究テーマや手法に制限が加えられてしまうこともありました。 CBRCでは、そういった“縛り”が、ほとんどありません(もちろん、研究センターとしてのミッションはあります)。 自分の本当に取り組みたいテーマに、自由に取り組み、研究を進められる……それが、最大のメリット。 また、研究を進める上で欠かせない環境も整っています。 強力な計算機パワーや研究者間の交流など、まさに研究に没頭できる環境になっていると思います。 以上の二つは、CBRCで研究を行う大きなメリットと言えるでしょう。

   理論だけでなく、成果を応用できる
          マインドを持つことが大切です。
─ 創薬の研究を進めていく上で重要な資質は、
  どんなものでしょうか。

 まず大切にしてほしいのが、「理論だけにこだわらない」こと。 創薬という分野では、理論だけを重視していてもその先につながりません。 コンピュータを利用した理論面での解析に加え、さまざまな実験を行う方との共同作業によって、実際の薬を創りあげていくことが求められます。 したがって、理論だけでなく、自分が得た知識を応用して具現化していくマインドを持つことが大切なのです。 また、他の研究者と協調して、一つのものを創り上げる、コラボレーションができることも重要になります。

 さらに、研究という場所だけでなく、実際に薬を創りあげていく現場の問題意識や手法に通じていることも大切でしょう。 現場ではどんなことが問題になっているのかをきちんと認識した上で、研究に取り組んでいく姿勢が要求される分野だと思います。

   精神的なタフさ、気持ちの切り替えが
          できる人が、求められています。
─ どのような方に、CBRCへ参加してほしいとお考えですか?

 まず、先ほど言ったマインドを持つ方、ですね。 さらにもう一つ条件を挙げるなら「精神的なタフさ」を持った人に、ぜひ来てほしいと思っています。

 私が取り組んでいる創薬の分野は、世界中で多くの研究者が“挫折”を味わっている分野でもあります。 膨大な数の化合物から薬になりそうなもの/薬になりそうな組み合わせを発見し、理論的な検証を行う。 その上で、さまざまな実験によって薬効などを確認していく。 ということの繰り返しです。 「見つけた!」と思っても、実際に効果のある薬になるかどうかは、すぐにはわかりません。 検証の過程で「これはダメ」という結果になることも数多くあります。 そんなときに、イヤになってしまったり、失敗を引きずるような方では、厳しいでしょうねぇ(嘆息)。 失敗に関する考察はきちんとした上で「次に行こう」と気持ちを切り替えられる人が求められています。

 自尊心を持って研究できる環境が整っています。
─ そういった資質のある方にとって、
  CBRCは働きがいのある職場ですか?

 もちろん、そうだと思います。 先ほど申し上げたとおり、CBRCでは研究者が自分の選んだテーマに没頭して取り組める場所です。 研究を進めていくために必要な環境も整っていて、じっくりと取り組むことができるようにもなっています。

 こちらも前述の通り、日本では計算機を使った創薬に取り組む人材が圧倒的に少ない現状です。 逆に言えば、人材が少ない分、一人の研究者がいろいろなテーマ/研究に取り組める環境と言えるでしょう。 CBRCは、そんな研究者をしっかりサポートしてくれるところです。

 創薬の分野は、まだまだ伸びる可能性が高い分野です。 計算機/医学/医薬といった分野に興味があり、自分の“得意技”がある方には、ぜひ来てほしいですね。 そういった方が、自尊心を持って研究できる環境が、CBRCには整っていますから。

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