研究者の声

生命情報工学研究センターの各研究チーム長が実際の研究活動や、
センターで働く理由など生の声をご紹介します。

福井 一彦 情報基盤統合チーム (併任)
福井 一彦
福岡県出身 昭和41年生まれ
米ネバダ大学 化学科化学物理学専攻
  対象は変わったものの、
     ずっと同じ領域の研究を続けてきました。
─ CRBCに参加されることになった経緯をお聞かせ下さい。

 日本の高校を卒業した後、大学と大学院はアメリカで終えました。 学位修得後はアメリカのテネシー州にあるオークリッジ国立研究所に所属して、研究を続けていました。 日本に帰国して、いろいろな方からお話を聞く中で「CBRCという研究センターが設立される」ということを知り、前センター長の秋山さん・浅井さん・諏訪さんとの面接を経て2001年から参加しました。 周りの方からは「大規模な計算機を導入した、すばらしいセンターができる」と聞いていましたけれど、確かにその通り。 環境のととのった研究場所だと思っています。

 現在取り組んでいるテーマは「光による、生体高分子の解離反応」の研究です。 もともと学部生時代から、自分の興味の対象は二つありました。 一つはレーザーや質量分析系などの「実験」分野。 もう一つが分子シミュレーションなどの「理論」分野です。 その後、レーザーを利用した実験とシミュレーションをテーマに研究を続けています。 低分子から高分子ポリマー、そしてCBRCでは生体高分子と、対象は変わっていますが、取り組んでいる“軸”は同じといえますね。

    CBRCでの研究は
          実に自由でやりがいもあります。
─ アメリカと日本では、研究環境はずいぶん違うものですか?

 一般的には、アメリカの方が日本よりも自由度が高いと言われています。 しかし、実は違うと思います。 アメリカでの研究の場合、契約書による制限が非常に高い。 「これはしてはいけない」とか「これはこう進める」といったたくさんの制限が加えられます。 研究に対して、より明確な課題と目的を出すことが求められます。 だから、アメリカで研究を始めるときには、初日に大分な契約書を読まされますよ、こんなに分厚いやつ(笑)。

 日本でCBRCに参加したときは、研究に対する制限の少なさを嬉しく思いました。 基本的には、研究者は自分の好きなテーマに取り組み、研究を続けられる。 自分自身が継続的に取り組んでいるテーマ、興味を持つ分野に集中して取り組める、という意味では、日本の方が自由度が高く、やりがいもあります。 もちろん、研究者個々の自由度が高いと言うことは、下手をすると“烏合の衆”と化す危険もありますよね。 でも、設立当時からの6年間を見る限り、そのようなことはないまま良い環境を維持していると思います。

 大きなバスケットの中で作ったネットワークで、
   一つのものを作り上げていくのがCBRCです。
─ 各自が自由な研究を続けていくだけでは、
  バラバラになりそうですが。

 CBRCでは、そんなことはありません。  確かに、非常に多彩な分野の専門家が集う機関です。  各自の“得意技”は違っていて、まとまりのない“烏合の衆”になる危険も秘めています。  が、これまでの6年間でそうなることはなかった。なぜか?

 CBRCでは、研究者各自が自分のテーマに沿った研究に取り組むとともに、チームとして一つのものを作り上げていくことができているからです。 各自の得意分野は異なりますが、チーム内外にこだわることなく研究者同士が相互に稠密なネットワークを作り上げ、大きな一つのもの−研究の成果ですね−を作り上げています。 各研究者にそういった心構えがあると同時に、ネットワークを効果的に利用するための仕組みも整っている。 それが大きいんだと思います。

  挑戦する好奇心のある人。これに尽きます。
─ では、そんなCBRCに来てほしい方は、
  どんな資質を持った方でしょうか。

 何よりもまず、「新しいことに挑戦する好奇心のある人」に来てほしいと思っています。 この一言に尽きますよね。 どうしても研究者の中には、自分がこれまで積み重ねてきたことに執着し、その延長線上でしかものを考えられない方もいます。 こうした方は、バイオインフォマティクスという変化に富む分野の研究には向かないでしょう。 先が見えない、変化が激しい分野の研究を進めるには、何よりも好奇心、です。

 Ph.Dは何の略語か。 アメリカで言われた言葉が心に残っています。 Ph.はフィロソフィである、と。 つまり、自分の目の前に表れた新しい事象に対して、どうアプローチするか、どう考えるか、そのやり方がしっかり身に付いた人に与える称号が、Ph.Dなのだと言われました。 自分のフィロソフィを持ち、新しいことに挑戦し続ける方にこそ、CBRCに来てほしいと思います。 そういった方には、大きなチャンスが与えられる場所だと信じています。

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