研究者の声

生命情報工学研究センターの各研究者が実際の研究活動や、
センターで働く理由など生の声をご紹介します。

富井 健太郎 細胞システム解析チーム 研究チーム長
富井 健太郎
兵庫県出身 昭和45年生まれ
京都大学大学院 理学研究科修了
 研究計画と投資するリソースに基づいて、
             参加を決断しました。
─ まず、CBRCに参加されたきっかけを教えて下さい。

 CBRCが設立される直前の2000年のことです。以前所属していた大学院の研究室で、助教授として勤務されていた秋山先生(前センター長)とディスカッションをする機会がありました。当時研究していた「タンパク質の立体構造予測」について、いろいろとお話をさせていただいたのです。その時でした。秋山先生から「今度できるCBRCに来ないか」というお誘いを受けたのは。バイオインフォマティクスの本格的なセンターができる。その言葉に惹かれました。

 ポスドク後の進路を考えていた時期でもありましたので、その後いろいろと考えました。大学に残って研究を続けるか、それとも新しくできるCBRCに行くか。自分の研究計画と、投資するリソース……といったことです。結果として、その時のお誘いに乗る形で、CBRCへの参加を決めました。

  最高の環境で、
        自分の研究を続けていける。
─ 参加を決めるときの決断について、もう少し教えて下さい。

 最終的な決断の決め手になったのは、「自分の研究が続けられるか」ということ。当時から今まで、ずっとタンパク質の配列や構造、機能の解析を自分の研究テーマとしています。大学院を出てからも、この研究をずっと続けていきたいと考えていました。どうやって研究を進めていくかという計画や、そのためのリソース(時間や労力など)をどう配分していくか、といったことも考えていました。

 ただ、自分の研究を続けると言っても、簡単なことではないと思っています。たとえば大学に残ったとすると、自分の好きなことだけを研究できるわけではありません。研究室の長が取り組んでいるテーマに沿った研究をするといったことを、ポスドクの期間には求められる場合もあります。

 まだ設立されていなかったとはいえ、CBRCにはそういった制限はないと考えました。計算機設備などが整った最高の環境で、自分の研究を続けられる。その点は魅力でした。

  多種多様な視点からのフィードバックや
        アドバイスをもらえる場所です。
─ 実際に参加されてみて、その時の判断は合っていましたか。

 はい。思った通り、自主的な研究を続けることができています。もちろん、自分の好きなように研究を進めるためには、その分だけ責任も大きくなります。研究テーマが意義のあるものであることを示し続けるための競争は厳しいですし、自分で裁量できる範囲が大きい分の責任も負うことになります。それでも、この環境で研究することのメリットは、自分にとって大きなものとなっています。

 環境、という点で言えば、設備面だけでなく“人”の環境も素晴らしいですね。CBRCはさまざまな分野の研究者が集う場所です。同じテーマでも、まったく別の視点から研究を行っている研究者もいる。研究者同士の交流もあり、そういった場で思いがけないヒントをもらうことも数多くあります。自分の研究を続けつつ、多種多様なフィードバックやアドバイスをもらえる。CBRCは、自分を高められる場所だと言えるでしょう。

  アメリカでの取り組みに刺激を受けつつ、
             研究を続けています。
─ 現在はどのような体制で研究を行っているのですか。

 現在は、配列解析チームに所属しています。タンパク質の立体構造予測ツール『FORTE』の開発を進めています。立体構造モデル構築の鋳型となるタンパク質の候補を同定するツールで、FORTEはFOld Recognition TEchniqueの略です。すでに公開もしています(http://www.cbrc.jp/forte)。このツールのさらなる改良に取り組んでいるところです。

 実は少し前まで、アメリカのUCバークレイに行っていました。アメリカでは非常に熱心にゲノムへの取り組みが行われています。研究機関だけでなく、企業なども含めて、国を挙げて取り組んでいます。いかに安価にゲノムを“読む”か。その目標に向かって、企業/研究機関の間での競争が非常に激しく行われています。こうした動きにも刺激を受け、CBRCでの研究でも成果を出したいと考えています。

  素晴らしい環境をうまく利用し、
      使いこなせる人に来てほしいですね。
─ どのような方に、CBRCへ参加してほしいとお考えですか?

 「CBRCの環境を活かせるような方」ですね。先ほども言ったように、CBRCの魅力は多種多様な研究者が集まっていることにあります。さまざまな人の意見を素直に受け入れ、自分の研究に活かしてゆく。そういった方に来てほしいですね。

 「自分の研究を一人でコツコツ進めていく」ような方。そういう研究の方法もあるとは思います。しかし、せっかくCBRCに来るのであれば、他の研究者との協働や交流を積極的に行ってほしい。それが、CBRCの良さだと思いますから。

 CBRCは、計算機などの設備面でも、研究者相互の交流という点でも、すばらしい環境だと思います。この環境をうまく使いこなせる方なら、きっと自分の研究を充実したものにできるはずです。ぜひ、そういう方に来て頂きたいと思います。

※掲載内容は2009年1月のインタビュー時点のものです。
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